塗装の種類と各特性のまとめ

ハーイ。どうも、すたがです。

最近友人が良い機材でギターの音を聞かせてくれる様になったのでちょっと耳が良くなりました。

それで気になってきたのが塗装。

 

f:id:handmadetown221b:20171005032531j:plain

 

だいぶ前に自作したギターもそうだったけど、厚塗りの塗装って本当に鳴りを殺すよね。

鳴りって言っても生音の大きさって意味ではなく、何というか人間でいう腹から声が出てるかどうかって感覚。

まあ実際正しい発声が出来ていると自ずと声量も大きくなる(増える?)訳ですが、馬鹿鳴りというか叫んでるのとは質が違うわけですよ。

 

多分。

 

中の人は専門的な事を学んではいないので、前回同様あちこちで聞いたり拾ってきた情報から恐らくこうだろうと推測した物になりますのであしからず。

 

そんなに的外れではないはず...多分。

 

あ、前回も超長いので詳しい話は良いから長所短所だけ手っ取り早く教えろって方はページ下部のまとめへどうぞ。

 

大前提

何事も結局は好み。物事はその人それぞれの主観によって評価されます。

多くの人の好みに沿った物ほど世間一般的に良しとされますが、それがある人にとっても良しとされるかどうかは分かりません。

その人にとっては世間一般的なデメリットが大きなメリットになるかもしれません。

 

しかし今回は取り敢えず世間一般的に良く言われる「硬質で薄い塗装」を良しとしてお話しします。

塗装は柔らかく、分厚いほど木材の振動を吸収してしまいます。

これを上手く利用して音作りに活かしている方もいらっしゃるでしょうが、これはもう余程の経験を持った職人の世界のお話になると思います。

ここまで来ると塗装だけの範疇に収まらないので、今回は考えないものとします。

 

ポリ塗装

一様にポリ塗装と言っても実は2種類あり、

①ポリエステルと②ポリウレタンです。

どちらも2液性の塗料で、2種類の液体を混合することで化学反応を起こし硬化して塗膜を形成します。

 

①のポリエステル塗装は硬化が非常に早く、量産に向いているので低価格帯のギターによく使われていますが、一度に形成する塗装の厚みが非常に厚いので木材の鳴りを阻害しこもらせます。それを下地と着色層、さらにトップのクリアーコートまでと

なるとそりゃあもう極厚です。

超安物特有のあのなんだかプオンプオン鳴る感じは、恐らく木材の質よりも厚すぎる塗装が起こしているのではないかと思います。

 

②のポリウレタン塗装は良く見る中~高価格帯のギターに使われています。

①のポリエステル塗装に比べ、硬化が少し遅いので若干効率が落ちます。

しかしポリエステルよりは薄く仕上がるので木材の鳴りへの影響は幾分マシです。

 

ちなみにポリウレタン塗装は分厚いから悪いという思い込みはちょっと詳しくなってきた中高生軽音部員にありがちですが、ちょっとこだわってるメーカーだとこの塗装を更にぎりぎりまでセンディング(やすりで削る)事によって極限まで塗装を薄くしているメーカーもあります。

これによってポリ塗装でも塗装による振動の阻害を極限まで少なくする事が可能です。

ただ非常に手間がかかるので実際にそこまでしてるギターは15万~くらいの物からでしょうか?

 

利点も多くあり、柔軟性がある為傷がつきにくく耐摩耗性があり、汗や化学薬品にも強く美観も長持ちするため綺麗なギターを長く使いたいおすすめです。

 

ただし歴戦のギタービルダーBlack Cloudさんはインタビューでポリエスターが木材に良くない影響をもたらすとも仰っていました。

 

ラッカー塗装

沢山のギタリストが好むこの塗装。

ニトロセルロースが開発されてからポリ塗装ができるまではほとんどこれが使われていました。

よく言われる50年代あたりからのヴィンテージの時代がこの期間にあたり、それらの時代の際現には不可欠であると一部の熱烈なファンが躍起になっています。

ラッカーへのこだわりを持つことは全く悪くありませんが、妄信的になる前にいくつかの知識を身に着けておきましょう。

 

市販のラッカー塗装にも3種類?くらいあります。

なんで?かというと先ほどのポリとは違い手法的な話が混ざるからです。

 

①ニトロセルロースラッカー塗装

これが巷で言われているラッカー塗装を正しく指す塗装です。

この独特の風合いはルックス的にもヴィンテージの再現に欠かせません。

ニトロセルソースをシンナーに溶かした塗料は硬化すると本当に固くなるので、木材の振動を吸収しません。また、塗膜も薄くしやすいです。

これがラッカー塗装のギターが良い音がするという最も大きな理由だと言われています。

が、こちらでも触れた通り固いという事は割れやすいという事。

乾燥が進んだり気温や直射日光の影響で塗装が収縮しウェザークラックと呼ばれる割れを生じます。

また日焼けや耐摩耗性も低く、すぐボロボロになります。

が、ヴィンテージファンにはこの特性がたまらない様ですね。ギターと共に人生を歩み自分の進んだ道を刻んでいく。かっこいいじゃないですか。相棒って感じです。

ちなみに新品なのにわざとそう言った状態を再現したギターをレリックだとかエイジドだとか言います。

新品のギターを汚すのもお仕事になるというわけです。

 

ラッカー塗装のギターは空気を通すので木材が呼吸して鳴りがよくなるという話については、私は無くはないけどそこまで影響はないのでは?と考えているのでスルーさせて頂きます。

ただラッカーは木材の振動を阻害せず、また振動の影響及び乾燥が進むにつれて目に見えない隙間がどんどんできて結果楽器全体の鳴りを阻害する要素がどんどん無くなり、木材が振動しやすい状態に変化しやすいのではないかというのが私の持論です。

木材の保護力で劣るからこそ変化が起きやすいといった感じでしょうか。

 

それとこれは半分都市伝説みたいな話ですが、1950年代の神話で語られているラッカー塗料は、現代では作れないそうです。

材料や技術的に、ではなく環境やら人体への影響やらで法律的に規制がかけられていくうちに成分的な物がどんどん変わっているそうですね。

ただごく一部の拘りすぎる工房なんかがこっそり塗料メーカーに当時と同じものを作らせているんだとか...。ロマンはありますが、発覚すれば一斉検挙待ったなしです。

 

②アクリルラッカー

こちらはアクリル樹脂をシンナーに溶かした塗料です。

勘違いしがちですが、ラッカーと言うのはシンナーなどの速乾性の溶液が乾いた結果塗膜を形成する成分が残る塗料の事を指すので、ギター業界で言うラッカー塗装はもはや業界用語と化しています。

ニトロセルロース塗装と呼んだ方が誤解が少なくていいと思うんですが、手遅れです。

私も結局ラッカー塗装と呼んでます。

私は初めてギターを自作したときにこのラッカーを使って塗装しました。

というかニトロセルロースの缶スプレーなんて今時滅多に見かけません。

 

それで、このアクリルラッカーの特性としては別に悪くはありません。ギターに限って言えばポリ程強くはないがそこそこ強度を持ったラッカーくらいのイメージでしょうか。

PRSのV12フィニッシュはアクリルラッカーの一種だといいう噂を誰かから聞きました。

確かに白濁を起こしますもんね、アレ。

 

 

③トップラッカー

塗料の種類ではありませんが、ついでに。

この表記があった場合は下地はポリで上塗りだけラッカーで塗装してますよって意味です。

つまりよく言われているラッカー特有のメリットは見た目に関する点のみと考えてよいでしょう。

一応トップのラッカーが消耗するほど塗装が薄くはなりますが。

 

ちなみにラッカーの塗料自体はそこまで高くありません。それなのにラッカー塗装のギターがやたら高価なのは、乾燥に時間がかかり作業時間が長くなりやすいのと、完成後も傷がつきやすすぎてセットアップ、運搬、展示とあらゆる工程で非常に気を使うからです。

その上試奏傷どころか展示してるだけで塗料が痩せてくるので特価品になりやすく、人気な割に楽器屋泣かせな塗装です。

 

その為近年のラッカー塗料はは意図的に柔らかく作られているらしく、実際世間的に求められている塗装とは傷がつきにくく長く美観が保たれる塗装です。

それに漆やシェラックもそうですが、塗料が柔らかい方が取り扱いも楽ですしね。

 

プレイヤーは綺麗なラッカー塗装のギターが買えて嬉しい、メーカーもお店も損をしにくくて嬉しい。

近年のギブソンの塗装が柔らかいと言われているのはこういった背景から来ているのではないかと考えています。

 

逆に鳴りが良いと評判のエイジドモデル、特にマーフィーエイジドには硬いラッカーを使っているのかもしれません。

硬い方が、というかオリジナルに近くなければリアルな加工が難しいでしょうし、何と言ってもその他の過程で傷がついても分からないんですからね。それすら自然についた傷、リアル感の演出になるのではないかと(多分)。

 

尚、この辺りは完全にただの推理であって証拠も何も無いのでただの1つの説として捉えて下さい。

間違っても自信満々にこれをそっくりそのまま他人に語ったりしない様に。

シェラック

シェラックと呼ばれるラックカイガラムシという虫の分泌物をアルコール等に溶かした塗料です。音響的には最も良いと言われていますが、それがギターの場合にも有効かと言われると不明です。あと塗装の乾燥に3ヶ月はかかるとか。

 

虫の分泌物!?と若干の不快感を感じた方もいらっしゃるかもしれませんが安心してください。

 

風邪薬とかマー〇ルチョコのつやつやしたコーティングもシェラックです。

あと天然着色料とか言ってる食べ物の着色は虫とかそのフンを使ったものも少なくないそうです。きれいごとだけで生きていけると思うなよ?汚らしいのはお前の心の方だ。

 

話が逸れましたね。楽器に使う塗料としては最も歴史が古く、より手軽なニトロセルロースラッカーが開発されるまではヴィンテージのスパニッシュギターやヴァイオリン、その他ヨーロッパの家具等幅広く使用されていました。

 

実はラッカー(Lacquer)という名称の元になったのがこのシェラック(Shellac)です。

しかも日本の漆を見て感動したヨーロッパの人が代用品として発見したんだとか。

海外では漆はジャパニーズラッカーと呼ぶらしいです。

で、このシェラックを使った塗料にも歴史があって、初めにシェラックオイルに溶かして作るオイルニスという物があったですが、こちらは歴史が古く当時のレシピはほとんど残っていないようです。なんだか調べた限りギターにも不向きっぽいので、説明はこんなもんで。

 

オイルニスは乾燥に年単位の時間が必要なので、後にアルコールニスに取って変わられます。

名前の通りアルコールにシェラックを溶かしたものですね。

ニスを作るのもこちらが楽で、丁度この頃から調合レシピなんかが作られる様になりました。

ただかの有名なストラディヴァリのレシピを始め初期の当時の製作家がどうニスを作っていたかは常に議論の対象です。

ギタリストに馴染みのある話だとレイヴォーンのストラトのPUは交換されていなかったとかなんだったとか、TSは改造済みだったとかジミヘンのファズフェイスの中身は別のエフェクターだったとかそんな感じ。

 

で、シェラックを使用した塗装にはいくつかの方法があります。①刷毛塗りと②スプレーによる吹き付けと③フレンチポリッシュです。

 

①の刷毛塗りは文字通り刷毛で塗る方法。

②はその他の塗装の様にスプレーで吹き付ける方法。

③がまた説明が長くややこしくなるのですが、タンポと呼ばれるわたを綿の布で包んだものですこーしづつ塗り重ねていく手法です。

この方法ですと塗装は限りなく薄くなるので、ギターにとって理想的と言えます。

 

しかし一度に作れる塗装の厚さがとんでもなく薄いので、非常に手間がかかるのが難点です。その上このフレンチポリッシュという技術そのものも異質な難しさが...。

原料も取り扱いが難しく長持ちしないそうなので、完全に手工品ガチ勢向けですね。

 

昔木製の写真立てにこのフレンチポリッシュでの塗装を体験したことがあるのですが、一瞬でも手が止まったり力加減を間違えて引っかかったりすれば塗装にタンポの跡が残るわ、塗ったアルコールが乾ききらないうちに同じ場所に塗り重ねようとすればまた下地をめくってしまうわで大困惑でした。

 

塗装の質としては独特の高級感があり、ラッカー塗装を更に繊細にした特性で汗やアルコールに非常に弱いです。

ただしシンナーには溶けないのでシーラー代わりにスプレーまたは刷毛で塗り、サンディングした上からラッカー塗装をする個人製作家の方が結構いらっしゃる様です。

 

音に関してはシェラックのみを使用するのであればラッカー同様固い塗装によってダイレクトな音になると思われます。

これがヴァイオリン属の楽器になると、高音域の滑らかを出すためにニスにシェラック以外の樹脂を複数混ぜて意図的に塗装を柔らかくするそうです。

ラッカーの項目で触れた内容と似た様な考えですね。

ただし汗や水分に対する耐性は精製グレードの高いシェラックのみで行うのが一番良い模様。

こだわりだすと沼が深そうです。

 

また、その配合によって当然音が変わるので、ヴァイオリン製作家、研究家がこぞってストラディバリウスのニスがどうこうとか、各工房に伝わる秘伝のレシピだとかがあるみたいですね。料理みたい。

アーチトップのジャズギターなんかにはこういう塗装がマッチしたりするんでしょうか。

 

 

オイルフィニッシュ

乾性油という、乾燥時に塗膜を形成するオイルを使用した塗装法です。

木製品にしばしば施されているだけあって「木ッ!」感がハンパないです。無◯良品の木製品をイメージしていただければ分かりやすいかと。

 

木部に染み込んで表面を薄ーくコーティングするだけなので、音質的には最も木の振動に影響を与えにくい反面塗装としての強度は期待できず、汗を弾いたりもしないので汚れにも弱いです。

また、オイルフィニッシュに使われる植物油には通気性があるので湿度の影響を非常に受けやすく、つまり湿気に弱い個体のネックは夏と冬で大きく状態が変わる恐れがあります。

 

この事から塗装は木材の保護の観点では必要悪であると言えます。

 音質的には多少重くしっとりした音になるらしいです。なんとなくわかる。

 

あんまり書くことないっすね。

 

無塗装

ゼンラー。なんか昔は塗装剥がすと音がよく鳴るって迷信があったらしいっすよ。

あのビートルズも実践してたとか。

確かに文字通り服も鎧も装備していない、全く無防備な状態なので、木の鳴りは一切損なわれません。

しかし無塗装のギターは木部の振動が大きくなりすぎてしまいぼやけた締まりの無い音になりがちです。

それにエボニー等ごく一部の木を除き、木材というのは大体柔軟性があるのでぶつけるとすぐに凹みます。

塗装は必要悪なんですね。

 

既製品で無塗装のギターを見たことがないので、塗装しないという選択肢はどのメーカーとしても「ナシ」の様です。

 一目でわかる塗装まとめ

長いわ。

まとめに入る前に一つだけ書いておきますが、これらの塗装法ごとに性質の差はあっても優劣はありません。

有名な話ですとIbanezで多用されているバスウッド材は非常に柔らかく馬鹿鳴りするので、分厚いポリ塗装で強度を確保し振動の浪費も抑えているそうです。

ネジの締め具合で音が変わるように、サドルの材質で音が変わるように、これも好みの一つで、作り手にとってはギターの設計の一部ですね。

 

以下はそれぞれのグレードの特性のまとめです。自作の時の参考にどうぞ。

ポリ系

基本分厚く仕上がるが、サンディングで薄くすることが可能

頑丈で傷や剥がれに強く、綺麗な塗装面を維持しやすい

ラッカーほど固くないので鳴りは若干悪くなる

塗料は若干高価 

 

ラッカー

薄く仕上げやすく、独特の雰囲気が出る

硬質で剥がれやすいが、その分鳴りを殺しにくい

傷つきやすく汚れやすいが、ポジティブに言うとヴィンテージっぽい

黄ばみやすいが、これもヴィンテージ

汗やゴムなどに反応して塗装が爛れたりするが、これもヴィn(

アクリルラッカーはポリとラッカーの中間くらいの性質

 

シェラック

薄く仕上げやすく、独特の雰囲気が出る

ラッカー以上に繊細で特に水分や熱、アルコールに非常に弱い。

純粋なシェラックニスほど硬度が高く、水分に耐性がある。

シンナーには反応しないので上からラッカーを乗せられる

 

オイルフィニッシュ

木のさらさら感が得られる

木の鳴りを阻害しない

水分の出入りを防げないため、安定度が下がる

汚れやすい