オイル考察 - 指板に塗れるオイル色々

 今日の話題は、指板に使うオイルについて。

ネットを見る限り結構意見が分かれてますね。

 2017/11/30/145406kindf:id:handmadetown221b:20171205213907j:plain

ざっと挙げた限りでも

・指板が乾くと割れるから保湿しろ

・オイルも水分だから木材に悪影響

・レモンの成分がフレットを腐食させる

・指の油で十分だよ

・指板をオイルで満たして水分の入る余地を無くす

・表面だけ保護すれば良し

と色々な解釈がある様で。

今回はこれらの意見の両側から考察してみる事にします。

尚、私は専門家ではないのであくまで素人の一意見としてお受け取り下さい。また、ご自身のギターにオイルを塗る際も自己責任でお願いします。

 

 

保湿という観点

指板にオイルを塗る理由としてよく挙げられるのが、木材の乾燥が原因で起こるひび割れです。

エボニーを主に硬質な木材は柔軟性が無く、乾燥時に木の収縮に耐えきれず割れてしまいます。逆に言えば柔らかい木であれば柔軟に形を変えるので割れが起こらないという事ですね。

ジョジョ5部の「『柔ラカイ』トイウ事ハ、『ダイヤモンド』ヨリモ壊レナイッ!!」というスパイスガールのアレと同じ理論です。ダイヤモンドって叩くと普通に割れるらしいです。

 

古いラッカー塗装が割れるのも同じ話ですね。

 

これはエボニーに限らず木部が空気に触れている場合は必須と考えても良さそうです。

手持ちの古いローズウッド指板にも割れが起きています。

エボニーに比べれば柔らかいと言っても、ネックに使える程度には固いです。

 

メイプル指板のギターは指板まで塗装されてるので保湿目的のオイルは不要です。クリーニング目的以外ではわざわざ塗る利点は特に見当たりません。

 

保「湿」と言う言葉を使うだけあって、油分だって水分だからやりすぎると木材が変形すると言う意見があります。

しかし、長期間放置されカラカラに乾いた指板にオイルを垂らすとみるみる吸収しますが、比較的新しいギターにオイルを塗っても特に吸い込みは感じられません。

試しに2時間ほど指板の上をミネラルオイルでひたひたにした事があるのですが、次の日うっかり強いマスキングテープで指板の表面を剥がしてしまった時、剥がれたほんの0.数ミリの下はオイルを塗る前と変わらない木肌でした。

その後その部分に再度オイルを塗り直すと何もなかったかの様に剥がれる前の状態に。

粘度等の要因で殆ど浸透していなかったのでしょうか。それとも、時間が足りなかったのでしょうか。

以上の経験からオイルで指板をひたひたにするのはあまり効果が無いのでは?と思います。

 

一方でオイルを多量に使った場合の「オイルがフレットと指板の隙間に入り込んでフレットを浮かす」や、「木材が膨らんでフレットを押し出す」という意見については概ね同意しています。

が、これも直接的な原因はオイルよりはフレットにあると考えています。

フレットの足をきちんと指板のRに沿う様に曲げてから打ち込めば、多少木材が柔らかくなったところでフレットの形は維持される筈です。

また、指板側の溝切りも最低限に、フレットの足の長さに必要な分だけ切っていればフレットと指板の隙間に入り込むオイルも少なくなり、

むしろオイルによる多少の膨張がフレットの足をより強固に固定するのでは?と思います。

 

デメリット?酸がフレットを腐らせるかもしれない

レモンオイルやオレンジオイルの酸はフレットを腐食させる可能性があるそうです。

 

一方でレモンは金属のさび落としにも使われます。

身近な例で言うと茶色くなった十円玉をレモンで磨いてピカピカにするアレです。

誰もが小学生時代に一度はやってると思うんですけど、どうでしょう。

あれは表面の酸化した部分を酸で溶かしてるんですねー。という事はむしろフレットも同時に磨けているという見方もできるんじゃないでしょうか。

 

塗り終わったらさらにフレット磨きをするか、フレットについたオイルをクロス等でぬぐい取っておけば腐食はそれほど起こらないと思います。

 

そもそもレモンオイルに含まれるレモン成分もそれほど濃いわけでも無いので、少し塗ったくらいで短期間にフレットを腐らせる程の影響力があるとは考えにくいです。

上記の通り木部にも深くは浸透しないので、フレットの足まで届いてすぐに効くなんて事もないかと。

純粋なレモン精油を使うとか、三日三晩指板をレモンオイルに浸すとか極端な使い方をしない限りは大きく影響はしないのではないでしょうか。

 

フレットへの影響に関しては量的粘度的に手汗の方が大きそうです。

フレットと同じニッケル製の弦が張ったそばから錆びていく(ね、アーニー君?)んですから、同じ素材で同じく指にも触れているフレットが影響を受けないはずがない。

頂点はチョーキングによって弦で磨かれていますが、根元の方は・・・?

 

自分で書いてて不安になってきましたが、B〇OKOFFで買った、製造から20年経つ前オーナーに余程引き倒されたらしいスクワイヤくんのクッソ汚い指板を見る限りは、まあ大丈夫っぽいですね。

 

余談:メイプル指板のギターはネックが反りにくい?

オイルとはあまり関係ないお話ですが、ローズウッドって湿気に対して敏感らしいです。トミーが言ってました。

だからローズネックを注文するなら秋か春ごろにしとけって・・・。

 

そんなローズウッドを指板に使ったギターの殆どは、指板だけ塗装されていません。

むき出しです。そんな指板に水分が入れば、当然反るでしょう。

何故ローズウッド指板は塗装されないんでしょうか・・・。伝統?

今度機会があったら聞いてみましょうか。

 

逆にメイプル指板のネックは塗装されている分反りにくい様な気がします。

私と友人の持っている、丁度同じ時期に生産されたローズ指板とメイプル指板のギターを比べてみてもメイプルネックの方が歪みが少なく感じられます。

どちらも大して弾かれておらず押し入れに封印してあったような代物です。

実際個体差とか、押し入れ内の環境などの差もあったのでしょうが、何となくそんな気がするとだけ。

気のせいかな・・・

 

 

オイルの種類

オイルと一言で言っても様々な種類のものがあります。

商品名としてのレモンオイルではなく、本来の意味でのレモンオイルはレモン精油と言うレモンから抽出したオイルです。

美容目的や香りを楽しむ他、汚れ落としにも使われています。

 

純粋なレモン精油では酸が強すぎるからか、はたまたコストの問題か、ギター用のレモンオイルにはこれに鉱物油等別のオイルや薄めるためのアルコールを加えている様です。

お馴染みフェルナンデスのレモンオイルとハワードのオレンジオイルがこれに当たります。

 

鉱物油(ミネラルオイル

恐らく皆さんが気になったであろうこの鉱物油(ミネラルオイル)について。

これは石油から抽出した鉱油で、流動パラフィンとも呼ばれています。

これだけ聞くとえ?石油?化学物質?も不安に思われるかと思いますが、安心して下さい。人体には全く持って無害です。

 

天然オイルで、鉱物由来なのでむしろアレルギーなどが起こらない利点から医療の現場でも使われています。

ワセリンもこの仲間ですね。マッチョの人がテカっているのはこれを塗っているからです。

日焼けした黒いボディに光沢を出す事で、筋肉に陰影がついて見栄えが良くなる様です。

そういえばレスポールカスタムも真っ黒なボディと光沢感が魅力的なギターですね。何か関係があるかもしれません。

ちなみにワセリンの本来の使用用途は肌の保護、保湿です。

 

そして他のオイルと違う所が、鉱物油は空気を通さない所。つまり指板の表面にさえ塗っておけば乾くまで空気中の水分が指板に入り込むのを防げるのです。(多分)

但しラッカー塗装のギターに使う時には注意。

指板の淵から垂れたオイルが塗装と反応する可能性があります。

 

Suhrの工房ではBig bendsのミネラルオイルを使用している様です。純度100%でこれも人体に無害との事。

 

個人的におすすめなのがジョンソンのベビーオイル。これもミネラルオイル100%で、赤ちゃんの肌にも使える超優しいオイルです。

恐らくBig bendsの物と品質も変わらないでしょうし、Big bendsの物が650円で1oz(28.35g)

に対し、ジョンソンは570円で300ml。単位は違いますがジョンソンの方が安くて多いのは明らか。

量が多すぎる気もしますが、そこはまあ冬場の乾燥肌対策とかに使うとかして、どうぞです。

 

植物油

レモン精油を始めとする植物性油にも

①乾性油 ②半乾性油 ③不乾性油

の三つがあります。

 

①の乾性油は空気に触れると弾力性のある塗膜を作り、オイルフィニッシュに使われます。

代表的なのは亜麻仁油、大豆油、紅花油、くるみ油等。

②の半乾性油は長時間かけて柔らかい塗膜を作ります。代表的な物はごま油等。

指板に塗っても良いですが、ギターに使う理由は特に見当たりません。

③の不乾性油は常温において常に液体で、オリーブオイル等食用油はほぼこの区分。

レモン精油もですね。

 

オリーブオイルを指板に塗った事がありますが、保湿はできてもいつまでもベタベタして不快なのでオススメしません。弦の滑りは良くなりますが。

 

これら植物性の油を使う場合は乾性油が良いでしょう。塗膜を形成するので指板の滑りが長く維持され、ある程度保護にもなります。

 

その他の植物油を使用する場合は、ミネラルオイルと混ぜる事によってある程度ベタつきを抑えられます。

殆どのメーカーのギター用オイルがレモン精油ミネラルオイルとの混合品ですね。

 

植物油は量が多いですが、料理に流用できるのでそのまで困る事はないでしょう。

 

もう一つ、蜜蝋

オイルではありませんが、ワックスとしてしばしば家具や弦楽器等木製品の保護に使われています。

さっと説明すると蜂の巣を溶かした物で、乾性油と混ぜると蜜蝋ワックスになります。

塗った後の木肌はさらさらしていて触り心地が良いです。

しかしその反面取り扱いが少し面倒で、低温で固まってしまうので冬場は使いづらく、そして温めると独特の生臭い魚の様な匂いが・・・。指板に塗った後も数日は廊下に出さなければならないかと。

なので他の家具への流用の際も注意です。部屋中に蜜蝋の匂いが広がります。

蜜蝋だけで買うと約3000円程と価格も高めで、そこにオイル代。指板の為だけに使うには高くなりすぎる上、量も多すぎるのでここは既製品を買うのが得策です。

Old villageやMylands、ハワード等から家具用の物が1000〜3000円ほど発売されています。

 

染み込むだけのオイルと違って、指板の保護という点でもかなり優秀で個人的にはこれが一番ギターに優しいのでは?と思います。

 

ギター用の既製品では、フリーダムのレモンオイルが蜜蝋を含んでいます。これも塗ってから時間が経っても指板のさらさら感が持続します。

数年程使っていました事がありますが、蜜蝋の匂いも気になりません。

値段の割に量は少ないですが、粘度が高く指板にあまり染み込まないで止まるので他の物より一度に使う量は少ないです。

ミネラルオイル系のオイルは乾いてきた時にホコリでもついたのでしょうか、つっかかる感じというか、くっつく感じがします。

個人的には市販のレモンオイルではフリーダムの物が最も使い心地が良いです。

 

 

おわりに

長くなりましたが、オイルまとめでした。

オイルは塗るべき、塗らないべきと人によって意見が分かれるところではありますが、私は現交換の度に塗ってます。

 

メンテナンスした感が出るので!!!

 

使い切れる未来があまり見えませんが、前述のジョンソンのベビーオイルが無くなったら、またフリーダムを買おうかと。

 

 それでは、また次回~